月刊・お好み書き 2010年10月号(1990年3月創刊/通巻247号)
まずは猛暑でこの夏売り上げ好調だったという、ビールのお話。ビールを飲んで社会貢献できるイベント「Beers for Books(ビアーズ・フォー・ブックス)」をご存知ですか? 直訳すると「本のためのビール」ですが、これは、“ビール(に限らず飲み物すべて)1杯につき、1冊の本の制作費(100円)が途上国に寄付される”という仕組みのイベント。途上国の子どもたちに幅広く教育の機会を提供する活動をしている「Room to Read(ルーム・トゥ・リード)」が、現地語での出版を目指して始めた取り組みです。
2009年2月に東京ではじまり、その後、湘南、大阪、岡山など各地で開催され、さらに世界中に拡大。今では世界29都市で開催され、これまでに7万5980冊もの本を届けることができたといいます。私は、7月下旬に神奈川県藤沢市で開催された「Beers for Books」に参加してきました。意外にもお店には特にイベントといった雰囲気はなく、みなさん普通に仲間との会話を楽しみながら、お酒を飲んでいました。途中、スタッフの方が今後の開催のチラシと、くじ引きを売りに(この売り上げも途上国に寄付されます)テーブルに来て、後半には抽選会がありましたが、おそらくその場には、「Beers for Books」を知らずに来た人もいたのではないでしょうか。
つまりこれは、たまたまそこに飲みに来た人たちが社会貢献できてしまうという、偶発性も楽しめる仕組みなのです。社会貢献とはいえ、これなら誰でも肩の力を抜いて気軽に参加できそうですよね。しかもビール大好きな方には、こんなハッピーな仕組みはないはず! ぜひ気軽に、参加してみてはいかがでしょうか。
次に紹介するのは、カラフルでおしゃれなパンツです。「Pants to Poverty(パンツ・トゥ・ポバティ)」というイギリス生まれのパンツブランドが日本に上陸し、今話題となっています。「Pants to Poverty」【Poverty=「貧困」の意味】は、インドで育ったオーガニックコットンを使用し、フェアトレードによって生産者をサポートしている商品です。コットン製造現場ではよく見られる児童労働に関しても、一切していないと保証されており、また、カラフルな色合いではありますが、染色において人体の健康に害する染料をいっさい使用していません。さらに、製造所における排水も90%以上をリサイクルするなど、徹底した環境配慮を実践している商品なのです。
オーガニックコットンやフェアトレードというと、質素でナチュラルな雰囲気の商品が多いのですが、この商品は徹底的にポップで明るいデザイン。そこには、このブランドが発する“難しく考えないでOK! せっかく買うならかわいくて楽しいこれを選んでみて!”というメッセージが込められています。
そのわかりやすいメッセージが多くの若者に支持され、劇薬指定の農薬を途上国の生産者に売りつけている企業に対する抗議活動にまで発展。世界中のメディアが取り上げて大きな話題となり、その企業は2010年までに当該農薬の使用を中止する宣言をするに至ったと言います。
日本ではまだインターネットでのみ販売している「Pants to Poverty」ですが、この勢いなら、市場に流通するのも時間の問題かもしれませんね。
これら2つのプロジェクトが教えてくれるのは、“社会貢献も大事だけど、難しく考えるより、まず楽しいという気持ちがなくちゃ!”ということ。自分にあった楽しめる方法でなら、社会貢献なんて意識せずに、自然に自分の生活の中で続けていけるはず。義務感ばかりが先に立っては、なかなか長くは続かないものですよね。
こんな風に気軽に、少しずつ社会にいいことを始めてみてはいかがでしょうか。それはあなたにとって、そして地球にとって、大きな一歩となるはずですよ。
※ 詳細は「Beers for Books」のホームページ(http://www.beersforbooks.org/)で。
正確な営業時間は、念のため直前に会場にご確認ください。